緊急事態宣言発令を受けて、外出自粛要請が続いています。今まで仕事が忙しくて、家で本を読んだり、映画を観る時間がなかった方も、今は家時間を有効に使えているのではないでしょうか。そこで今回は、大手町周辺を舞台にした小説をご紹介します。これらの小説を通して、今まで知らなかった街の魅力を発見できるのではないでしょうか。
松本清張『点と線』
松本清張の「点と線」は、清張の推理小説として初の長編連載です。旅行雑誌「旅」に昭和32年から連載されました。ちょうど前年、東海道線が東京から神戸まで電化され、旅行ブームが始まった頃でした。
この小説のテーマは、東京と博多を結ぶ特急「あさかぜ」。小説のカギとなる「4分間の見通し」も見どころです。実はこのトリックを思いついたのが東京ステーションホテルの209号室だったと言われています。現在は2階2033号室になり、『点と線』の連載第1回のページと当時の東京駅の時刻表が飾られています。
『点と線』
著者:松本清張
発行:新潮社
価格:605円(税込)
朱野帰子『駅物語』
東京駅で働く駅員たちの奮闘を描いた小説。東京駅は毎日100万人もの人たちが乗降する日本有数のターミナル駅のひとつです。ここで働く駅員たちは、定時発車の奇跡を目の当たりにしたり、鉄道員の職務に圧倒される毎日を過ごしています。
主人公の新人駅員の若菜直が配属されたのが東京駅。酔っぱらいの乗客、鉄道マニアなどたくさんの人たちと触れ合うことで、成長していく物語です。巨大ステーションでは、様々な人が働き、それぞれの役割を果たしているからこそ成り立っていることを知ることができるのも楽しいところ。
『駅物語』
著者:朱野帰子
発行:講談社
価格:836円(税込)
東野圭吾『麒麟の翼』
東野圭吾の大人気ミステリー加賀恭一郎シリーズの9作目。五街道の起点と定められた「日本橋」を舞台にした物語です。加賀は日本橋署の警部補。題名にもなった日本橋の麒麟像前で男が力尽き倒れているとこから物語は始まります。もともと麒麟は中国の伝説の生物で、本来は翼がありません。日本橋の麒麟像に翼がつけられたのは、日本の道路の起点から日本中に飛び立っていけるようにという願いが込められているのだとか。捜査に浮上した日本橋七福神や人形町・水天宮など、周辺スポットもたくさん登場します。本を読んでから巡ってみるのも楽しそうです。
『麒麟の翼』
著者:東野圭吾
発行:講談社
価格:814円(税込)

『駅物語』の舞台にもなった東京駅。駅の中では様々なドラマが

日本橋の麒麟像。日本中に飛び立っていけるようにと翼がつけれたのだとか